プライド (真山 仁)

ハゲタカシリーズの著者が描く短編シリーズは、社会問題を抉った鋭い作品ばかりだった。それぞれの作品を読むと、当時、似たようなニュースがあったなということを思い出す。企業や政治の不正は、単なる一企業や個人の問題ではなく、社会全体の問題として捉えなければならないのだが、実際には多くの無関心がそのことを引き起こしているのだと気付く。

農業問題、医療問題、食費安全問題など、本来、我々の身近にある事柄について、ニュースを見ながらどこか他人事のように感じていた自分がいる。憤りを感じたとしてもそれは一過性のもので、マスコミが報じなくなればやがて忘れてしまう。問題は何も解決していないにも拘わらず。

この本を読むと、常に様々なことに疑問を持ち、自らの頭で考えて行動することが何よりも必要だと理解できる。その行動が目先の不利益になるとしても、である。それぞれの物語には、行動したからといってすぐに社会が変革されていくような安易な希望はない。厳しい現実が突き付けられるばかりである。

それでも行動を起こしていかなければというモチベーションを与えてくれるのがこの本だ。社会を構成する一人として、しっかりと胸に刻んでおくべき作品だった。

個人的おすすめ度 4.0