ピエタとトランジ <完全版>(藤野 可織)

人の死は当たり前のことだ。それが殺人となると特殊なことになる。しかし、日常的にたくさんの殺人が繰り返されたら、人間はどうなっていくのだろう。

死を導いてしまうトランジと、彼女に寄り添い続けるピエタ。二人は特別な社会を目指したわけではなかった。ピエタは、与えられただけの当たり前の日常に自分を見出すことができず、トランジは当たり前の日常を求めることができなかった。二人でいることが、存在理由を確認できる唯一の方法だったのかもしれない。

この作品は、殺人の善悪を語るようなものではない。正論を語るようなものでもない。物語の中でも語られているが、実際、人が生きることに意味などないのかもしれない。むしろ、生きるために意味を求めるようになってしまったのかもしれない。

この物語の結末は、人類の未来なのだろうか。

個人的おすすめ度 3.5