ドミノ(恩田 陸)

東京駅周辺を舞台に、28人の登場人物がそれぞれの立場で奔走する様を描いたパニックコメディ。保険会社の社員、子役オーディションを受ける娘と親、ミステリー好きの学生、別れ話をする青年実業家、俳句を楽しむはずの警察OBなど、それぞれ接点のない者同士だが、俯瞰的に見ていくとどこかで繋がっている。

雑踏を眺めていて、ふと他人のストーリーを勝手に想像してしまうことがあるが、この物語はそれを突き詰めていって、完全な物語を作り上げた傑作である。ありえないと思う部分もあれば、これはあるなと頷いてしまうシーンも多々ある。すべてひっくるめて、世の中そういうことだよね、と妙に納得してしまうところがある。

たくさんの人物が出てきて、シーンも次々と変わり、ジェットコースターのようなスピード感で展開していくのだが、読書もまた止まることなくスラスラ進んでいく。それぞれの人物像がきちんと頭に入ってくるのが不思議である。

読み終えたあとは、街を歩いていて知らない人を見かけても、もう他人とは思えなくなるかもしれない。

個人的おすすめ度 3.5