チーム・オべリベリ(乃南 アサ)

明治時代になり、文明開化の波が日本の各地にも広がっていった時期、北海道のオベリベリ(帯広)という新天地を目指した開拓者たちがいた。依田勉三が率いる晩成社が選んだその場所は、和人にとっては未開の地であり、アイヌの人々が暮らす場所でもあった。

主人公はの鈴木カネは、夫となる渡辺勝、そして兄である鈴木銃太郎らと共にオベリベリへと向かう。胸を高鳴らせてその地へ入った彼らの前には、過酷な現実が待ち受けていた。厳しい環境はやがて人々の間にも軋轢を生み、小さな村は崩壊の危機に瀕していく。

それでもなお前を向いて、忍耐強く頑張っていこうとする人々の姿には心を打たれる。主人公が苦しい胸中を誰にも打ち明けられないまま、それでも日々淡々となすべきことをなしていく姿勢には本当に頭が下がる。しかしそれは、そこで踏ん張り続けて礎を築いたすべての人に言えることだと思う。

本作品は晩成社の創成期を描いたもので、今の帯広の風景と重ねてみると、とても感慨深いものがある。そして、最後のシーンがとても素晴らしい。これを物語の終わりにしたというのが、ああ、やられたなという感じで、最高の読後感であった。

個人的おすすめ度 4.5