サロメ(原田 マハ)

十九世紀末、タブーに踏み込んだ劇作家オスカー・ワイルドと、その作品サロメのイラストで時代を席巻したオーブリー・ビアズリー。二人の関係が一線を越えて深まっていこうとする中、病気を抱えるオーブリーに献身的に尽くす姉メイベル・ビアズリーは、女優を目指しながらある行動に出る。

オーブリーのイラストが発表された当時の衝撃はとてつもないものだっただろう。それに人々が熱狂した退廃的な時代の空気感、そして登場人物の狂おしい情熱が、行間から溢れるように伝わってきた。中盤からは貪るように読書が止まらなくなり、もはや自分がその場所にいるかのような臨場感があり、ラストシーンは鳥肌が立った。

恐ろしく面白い──その表現がふさわしい一冊であった。

個人的おすすめ度 5.0