サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する(梯 久美子)

海に囲まれた日本では、大地の上にある国境線というのは実感がない。しかし、樺太(サハリン)にはかつて国境があった。

第一部は寝台列車で同地を縦断する旅、そして第二部は宮沢賢治が樺太を訪れた際の足跡を追う旅。鉄道に揺られ、過去と現在を何度も往復しながら、自分自身が旅をしているかのような気持ちになってページを捲った。

そこには、アイヌをはじめもともと住んでいた人々の歴史があり、ロシア人や日本人、あるいはポーランド人など、それぞれの事情でそこにたどり着き、暮らすことになった人々の姿があった。鉄道もまたその歴史を重ね、現在走っている鉄道だけでなく、廃線跡を訪れてその歴史を振り返るのもまた素敵である。

一方、宮沢賢治が樺太を目指したのは妹・トシ子を失った直後のことであり、その作品と重ね合わせて読んでいくと、見事にその旅のあり様が浮かび上がってくる。かつて読んだ作品であっても、新たな知識を加えて読むと感動が何倍にもなった。

読んでいて、成田空港からサハリンへの直行便があることが分かり、できれば一度行ってみたいという気持ちになった。実は沖縄へ行くよりも近いのである。コロナ禍が落ち着いたら、最初に出かけるのはこの場所かもしれないと思ったりしている。

個人的おすすめ度 4.0