コロナ黙示録(海堂 尊)

日本をはじめ世界で猛威を振るっているコロナウイルスへの対応、並びに腐敗した現政権や官僚への批判が込められた物語である。フィクションではあるが、これを読んで日本の現状を重ねない人はいないだろう。

医療機関におけるコロナ対策の実情やありかたなどはとても参考になる。こうした事態において、医療機関への支援が必要であることは急務であり、最優先されることであろう。何をもって充分かはわからないが、医療現場が懸命に努力していることは間違いない。

一方、本作品では、いわゆる森本学園問題や加計学園問題、検事長定年延長問題にも言及し、現政権の体質がコロナ対策へのあり方にも影響しているように描かれている。

残念なのは、物語に出てくる現政権への批判が一方的かつ表層的なものになってしまっていて、主に左派の人たちの愚痴のような感じに見えてしまうことである。政権側の主張もしっかり捉えたうえで批判が描かれていたら、もっと説得力を感じたかもしれない。よい悪役がいる物語は、やはり面白いものであるが、本作での悪役はあまりに稚拙な描かれ方であった。

タイムリーなテーマであり、医療シーンにも読みごたえがあっただけに、ちょっと残念な読後感である。

個人的おすすめ度 2.5