クララとお日さま(カズオ・イシグロ)

AF(人工親友)のクララは、自分のことを選んでくれた少女ジョジーが幸せになることを願っている。クララのその気持ちは、子供が夢を見るような純粋さである。ジョジーもまたクララの幸せを願い、彼女の母は彼女の幸せを願っている。

その瞬間で思っていることは正しいが、人の心は移ろっていく。そして、時に心はすれ違うこともある。クララはそのことを経験して学んでいくが、ジョジーへの思いは変わらない。そして、そのことがある行動へとつながっていく。

AFという主人公の視点から描かれていることにより、無償の愛の美しさと切なさが際立つ。誰かの幸せを願って生き、その願いが叶った時の喜び、──そして、その先にある幸せとは何かを考えさせられる。ハッピーエンドであるはずのラストシーンは本当に切なく、深い余韻が残る作品だった。

個人的おすすめ度 4.0