カミサマはそういない(深緑 野分)

収録されている短編7編は、決して後味の良い作品とは言えないが、人間の自分勝手な部分や、都合よく解釈してしまう理解力、あるいはそした人間社会の未来にある日常などを描いた作品群は、まさにこのタイトルのカミサマはそういないという世界だった。

冒頭から恐ろしい世界が続くので、半分過ぎたころには、この本はホラーかもしれないと感じた。本当に怖いのはオバケなどではなく、人間の内面にあるものが表出する瞬間だと思う。そして、希望が無くなった瞬間に、その恐怖すら忘れてしまうという本当の怖さが待っている。

ここに書かれていることは単なる物語に過ぎない……と思うのだが、本当にそうだろうか。自分自身がそんな社会に、あるいはそんな環境に生きていることに、単に気づいていないだけかもしれない。

個人的おすすめ度 3.5