カエルの楽園2020(百田 尚樹)

コロナ禍の状況をファンタジーに置き換えたカエルたちの物語。我が国が抱える問題をわかりやすくシンプルに描くと、きっとこんな世界観なのだろう。大変だ、大変だと騒いで、必死に対応しているように見えるが、客観的に見ればお笑いかと思うような現実。まさにカエルたちは私たちである。

お人よしのツチガエルたちだが、中には私腹を肥やして自分だけが良ければいいというツチガエルもいる。カエルのくせにお人よしというのも変なものだが、目先の情報に踊らされるカエルたちは、人がイイというよりその間抜けさによって自分たちの首を絞めている。カエルに首があればの話だが……。

この物語の結末は、バットエンディング、リアルエンディング、そしてグッドエンディングの三つが描かれている。それぞれに納得できるものであり、いずれの可能性もあるだろう。今読んでおいて、数年後にまたこの本を思い返して、物語と重ねてみると面白いかもしれない。その時に楽しむ余裕があることを願う。

前作「カエルの楽園」の続編だが、この一冊だけ読んでも問題なく楽しめる作品である。

個人的おすすめ度 3.5