エンジェルフライト 国際霊柩送還士(佐々 涼子)

海外で人が亡くなった時、その遺体はどのように扱われ、どのように母国に運ばれるのか。日本で外国人が亡くなった時もまたどうなるのか。当たり前のように隣にあった死について、恥ずかしながら考えたことがなかった。ずいぶん前から日本語ボランティアにも取り組んで、日本で暮らす外国人の方々と接してきたにも拘わらず、本当に恥ずかしい限りである。

本書は、海を越えて遺体を遺族へと届ける、国際霊柩送還という仕事を通じて、遺族の思い、そしてその裏側で淡々と仕事をするプロフェッショナルの姿勢が描かれている。読んでいると、死はどこにでも存在するのに、なぜ私はこれほど無関心でいられたのだろうかと気づく。それは、私自身が直接的に大きな喪失感を味わったことがまだなく、当事者意識を持てないからかもしれない。

つい先日、祖母が亡くなり、その葬儀の場でとても綺麗になった祖母と対面した。その裏側で仕事をしてくれた人々のお陰で、私たちはきちんとお別れをすることができ、あとには美しい思い出が残った。

しかし、海を越えて運ばれる遺体は、必ずしも綺麗な状態とは限らない。文字を読むだけでも本当に辛い思いが伝わるその体を、プロフェッショナルたちは蘇らせていく。それは魂の蘇りではない。故人が尊厳を保って、遺族と対面するための準備であるのだと感じる。

今や海外に行くことは難しい時代ではなくなった。国境を越えて人の交流も盛んになった。だからこそ、この作品は多くの人に読んでもらいたい。人が人として生き、そして死ぬこと──その意味を考えることが、出会った相手のことを深く想像し、慮ることに繋がっていくと思うから。

個人的おすすめ度 5.0