イマジン(有川 ひろ)

映画の制作に携わりたかった良井良助が、ドラマや映画の制作現場で成長していく様子と、そこに携わる人々の情熱を描いた爽快なヒューマンコメディ作品。

夢をもって上京した良助は、挫折を味わって惰性のような日々を送っていた。そんなとき、強面の先輩から制作スタッフのアルバイトに誘われる。期間限定の仕事とは言え、それはやりたかった仕事でもあった。素晴らしい仲間との出会い、憧れの女優さんとの仕事、監督や出演者の関係、撮影現場ならではの問題など、主人公が新しいことを学んでいく過程がとてもドラマチックである。

特にいいなぁと思いながら読んだのは、良助が仕事をすることになった殿浦イマジンの面々。一癖も二癖もある人々は、誰もが人としてかっこいい生き方をしている。こんな場所に入ったから良助は成長できた一方、良助にはここに招かれるべき素質があったという見方もできる。実際の社会もそういうものだと思う。

有川ひろさんの作品で何度も描かれている自衛官の人たちの活躍もまたこの作品には描かれ、さらに映像化された作品群の話(たぶん)も出てくるので、有川さんの作品をたくさん読んでいる人にとってはさらに楽しめる一冊になっている。流石に安定した面白さで、最後まで気持ちよく、安心して読むことができた。

個人的おすすめ度 4.0