まほり(高田 大介)

また凄い本に巡り合ってしまった。信仰というものがどのように形成されていくのか、日本における宗教というものはどういう位置づけなのか、風習はどのように変化してくのかなどが、しっかりとした資料と共に示されていて、小説を読む楽しさだけでなく、民俗学に関する学びが得られる作品であった。

蛇の目の謎は、なんとなく陰険な雰囲気のオカルトチックな話なのかと思いながら読み始めたが、そんな浅はかな予測はまったく外れた。その謎の先に、社会のそこかしこに存在している暗部が見えてきた。

この作品では、物語の面白さに加え、ある特定の物事の成り立ちを推測するために何を調べ、どう考えていくべきかという過程を、主人公と共に楽しむことができる。学術的には過去の資料を読む姿勢や、個人的推測を排除して評価することの難しさなども伝わり、モヤモヤした気持ちを引きずりながらも僅かずつ前進していくことに喜びを感じられた。

後半になるほど物語にのめりこみ、最後は寝不足必死という感じで読了した。

個人的おすすめ度 5.0