さよなら、オレンジ(岩城 けい)

アフリカで難民となってオーストラリアに来ることになった女性サリマは、言葉もわからない場所で自分と子供たちが生きていくために働き始める。言葉の壁を感じたサリマは英語を教えてくれる訓練校に通い始め、そこで日本人女性ハリネズミと出会う。ハリネズミは、大学教授の夫についてこの地へやってきたが、子育てもあり、自分の夢を諦めているようだった。

物語はサリマとハリネズミの二つの視点から語られる。自分の都合に拘わらず母国を離れなくてはならなかった二人は、境遇こそ異なるものの、互いに思いやる気持ちを持っている。家族ですら自分のことをわかってくれていないと感じるときに、たった一人でも話を聞いてくれる人がいること。それが生きていくうえで大きな支えになるように思う。

やがて二人の周りには素敵な人たちが増えていく。一期一会とは言うが、出会いを価値のあるものにできるかどうかは生きる姿勢によるものだろう。互いに励ましあいながら逞しく生きていく彼女たちの姿が、今日も美しく沈んでいく夕日の中で影を延ばしている。

個人的おすすめ度 3.5