この闇と光(服部 まゆみ)

レイアは閉ざされた世界で生きていた。唯一、頼ることができるのは父王だけだが、光が見えなくても、心を覆うのは暗闇ではない。しかし、平穏な日々は永遠ではなかった。

この物語において、闇と表現されるものは、物理的な光だけではない。真っ暗な心の内に籠ってしまうことこそが本当の闇ではないかと思う。その外側にたくさんの光があったとしても、それを見たいと思う心がなければ、広がるのは闇ばかりである。

肉体的な意味では闇の中でいきてきたレイアにとって、本当の光とは何だったのか。そのことは最期の一頁を読んでもなお答えの出ない問いである。それは、人にとって幸せとは何かという基本的な問いかけと同義である。

この本をこれから読もうとする人に説明は何もいらない。先入観を持たず、物語に足を踏み入れれば、そこには美しい闇と光の世界が広がっている。

個人的おすすめ度 3.5