あなたは、誰かの大切な人(原田 マハ)

人の数だけ幸せの形がある。六編の物語は、三十代後半からアラフィフの女性を描いたものだが、それぞれが社会的にも自立した女性であり、悩みながらも前を向いて生きていこうとする姿が美しい。

人間である以上、独りで生きていくことはできない。しかしそれは結婚あるいは子育てを意味しているわけではなく、人生の中で誰かに必要とされる瞬間が大切なのだと感じる。幸せというのは、そういうところにあるのではないだろうか。

六編の中には、著者が専門とするアートの世界もあり、舞台も日本だけでなく、アメリカ、トルコ、メキシコと、豊かな情景が目の前に広がっていく。読んでいてとても心地がよく、あっというまに読み終えてしまって名残惜しさを感じた。

困難なこともいろいろあるけれど、大丈夫、なんとかなる、そんな風に前向きになれる一冊だった。

個人的おすすめ度 3.5